「断熱」だけでは不十分?!見落としがちだけど大切な「気密」
最近、「〇〇基準の断熱性能!」という広告やCMをよく目にするようになりました。しかし、高断熱を謳っている建築会社で建てたのに「冬が寒い…!」「光熱費が安くならない…!」といったお話を耳にすることがあります。そこで今回は本当に「冬暖かく・夏涼しい家」を実現するために、「断熱」と同じくらい大切な「気密」についてお話ししていきます。
気密性とは?
お家でいう「気密性」とは、簡単にいうとそのお家にどれだけ隙間がないかということです。「気密性が高い家」は「隙間が少ない家」ということになりますね!
気密性は「C値」という値で表され、「C値」の求め方は建物全体にある隙間面積(㎠)を延床面積(㎡)で割った値「相当隙間面積」といい、延床面積あたりの隙間量(㎠/㎡)を表します。
C値(㎠/㎡)(相当隙間面積)=家全体の隙間の合計(㎠)÷建物の延床面積(㎡)
隙間の面積を表していますので、数値が小さければ小さいほど優れた気密性能を持っているということになります。よくいわれるのは、
C値=5.0であればはがき5枚分、C値=1.0であればはがき1枚分の隙間があるという例えですね。
気密の大切さ
それでは、住宅において気密性はどうして大切なのでしょうか。詳しく見ていきましょう!
・断熱性を損なわない
冬の防寒着で例えると「断熱」に相当する部分はコートやダウンジャケットの生地の部分、「気密」に相当する部分はボタンやジッパーの部分です。いくら暖かいコートやダウンジャケットを着ていたとしても、ボタンやジッパーが全開であればちっとも暖かくありませんよね。
これを家に置き換えると、どんなに冷暖房をしても外の空気が入ってくる状態ということになります。これでは効率が良いとは言えませんよね…。このように隙間から空気が通り抜けていかないようにすることが「気密」の役目です!「冬暖かく・夏涼しい家」の実現には、断熱性と同じくらい大切なものといえます。
・壁内結露を防止する
気密性が低いと隙間から空気が出入りしてしまい、壁の中で結露を起こしてしまいます。この「壁内結露」が起きるとカビが繁殖しシックハウスの原因になったり、木をダメにする腐朽菌やシロアリ被害の原因となります。つまり、家の寿命にも影響するのです。湿気の多い富山や石川では、より大切な要素ともいえますね。
・適切な換気計画を行える
気密性が確保できていないと、しっかりとした換気計画も行えません。穴だらけのストローでジュースを吸い続けているようなもので、適切に空気の出し入れができなくなります。昔の家は隙間だらけだったので逆に必要ありませんでしたが、現代のお家のつくりでは換気がうまくいかないと空気の〝よどみ〟ができてしまうため注意が必要です。
なぜ大々的に宣伝されないのか?
断熱性は大きく宣伝されることが多い一方で、気密性が大々的に宣伝されることは比較的少ないですよね。断熱と同じくらい大切なのに、なぜなのでしょうか?その理由を見ていきましょう。
・現場での気密測定が必要
断熱性を表すUA値であれば、図面と使う素材がわかれば計算上求めることができます。しかし、気密性(C値)は実際の現場で専用の機械を用いて測定しなければなりません。その結果をもとに算出するので、手間とお金がかかるのです。
・現場単位でバラつきが出る
窓の多さ、形状など間取りによっても左右されますが、気密性は現場の施工の丁寧さでも変わってきます。そのため、図面と素材が全く一緒でも同じ数値になるとは限らず、業者側からするとPRがしにくいという点もあります。
・気密測定を行っている業者が少ない
意外に思われるかもしれませんが、そもそも1棟1棟気密測定を行っている業者さんは少ないのが現状です。測定していないと、だいたいこれくらい確保できるだろうという理想値のカタログスペックを出すことはできても、実際の「このお家でこれくらい!」と示すことはできません。
C値1.0以下を謳っているのに実際の現場では2.0以上、ということも大いにありえます。もしかしたら正確な施工に自信のない住宅会社は測定したくないという裏事情もあるかもしれません…。
・国の基準が削除された
国の定める省エネ基準においては、平成11年基準ではC値は5.0以下(寒冷地では2.0以下)というものでした。その後、平成25年の基準では項目自体が削除されており、現在明確な基準はありません。どの文献や記事を読んでも気密の大切さは伝えられているのにホント不思議ですよね…。国の基準がなくなった以上、がんばってアピールしなくても良いと判断されているのかもしれません。
以上のように、気密性が大々的に宣伝されていない理由の大部分が業者さんの都合といえます…。
でも、高気密高断熱を謳っているのに、気密測定を行っていないというのは少し騙されたような気分になりませんか?
「冬暖かく・夏涼しい家」にしたい!という方は、断熱性能だけでなく、気密測定を1棟1棟しっかり行っているのか、実際の値はどのくらいなのかも要チェックです。
高気密のデメリットは?
それでは逆に、高気密住宅のデメリットはあるのでしょうか?
はっきりいってしまえば、ほぼありません!
高気密と聞くと息苦しいイメージを持たれるかもしれませんが、もちろんそんなことはなく、現在は義務化されている24時間換気の効率が良くなり新鮮な空気を取り入れやすくなるため、むしろ気密が良いことの方が望まれます。
また、高気密住宅だからといって窓を開けたらダメということもありませんので、自然の風を十分に取り入れて生活していただくことも可能です。
ただ1点だけ注意が必要なのは、今までのお家で使っていたファンヒーターや石油ストーブを使うことができません!家の中で火を燃焼させて暖める暖房器具は、その燃焼ガスが室内に充満すると酸欠のおそれがあるからです。
本物の火をみてぬくぬくするのが好きなのに…という方も、排気用の煙突がセットのFF式のファンヒーターや薪ストーブは使用できますのでご安心下さい。
気密の目安は0.7以下
最後に、目標とするC値の目安をお伝えします。
先ほども触れましたが、現在、気密性に関して国の定める基準はありません。ただし、ひとつの目安として、C値が1.0以上だと住宅の換気効率が悪くなるといわれています。そこで、最低でも1.0以下、できれば0.7以下を目指すことをおススメします。
窓が多い家や凹凸が多い家では高くなりやすいということもありますが、一般的な住宅において、C値0.7というのは決して高すぎる数字ではなく、断熱材の施工、気密テープの施工などを気をつけることで十分に達成できる目標です。何より、検討している業者さんが気密測定をしっかり行い、気密をよくする工夫がなされているのかその姿勢を見極めることが重要だと考えます。
まとめ
今回は意外と見落とされがちな「気密性」についてお伝えしました。断熱と気密、どちらか片方だけでは「冬暖かく・夏涼しい家」を実現できません。大々的に宣伝される「断熱性能」だけでなく、「気密性能」にも目を向けていただければと思います。
最後に、タカノホームでは1棟1棟気密測定を行っております。
C値は0.2~0.7の間でおさまっており、平均としては0.4前後です。ご興味ある方は実際の工事途中の現場案内も行っていますので、お気軽にお問合せ下さいね!
余談になりますが、気密性の高いお家ではキッチンの換気扇を強にすると、家の中に空気を入れようとする力が働き、玄関のドアが開きにくくなります。余計な隙間がないからこそ起こる現象です。これは自動ドアがついている常設展示場では体感できないので、是非実際のお家やお近くの街なか展示場で体感いただきたいと思います!