「耐震等級」って何?地震に強い家づくりで知っておきたい事
東日本大震災から今年で11年…。今もその傷跡は深く私たちに残っています。
そして各地で頻発する大きな地震は、明日は我が身であることを思い知らされます。そんな中、お家を建てる上で常識となりつつある「地震に強い」という考え方は、今後更に重要な要素となるはずです。
そこで、今回皆さんに知っていただきたいのは、「耐震等級」という言葉です!一度は耳にしたことがある方も多いと思いますが、この記事では改めて「耐震等級とは何なのか」「等級を高めるポイントは?」そして、「そもそも必要なのか?」などを分かりやすく紹介していきたいと思います。
耐震等級とは?
「耐震等級」とは、建物の強さ・強度の指針で、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)によって定められている住宅性能表示の値のことです。簡単にいうと、地震に対する倒壊のしにくさを表す値で、等級1~3まであり、等級3が最も強くなります。
よく混同されていますが、この品確法は、建築する上でのルール・法律である「建築基準法」とは異なるものです。建築基準法は「人命を守ること」を目的としているのに対して、品確法の耐震等級は、人命に加え「住宅も守ること」が目的となっています。そのため品確法では、壁の量、接合部、基礎など、より詳細な検討項目が定められています。それでは各耐震等級の定義を見ていきましょう。
「耐震等級1」・・・
数百年に一度発生する地震の地震力に対して倒壊、崩壊せず、数年に一度発生する地震の地震力に対して損傷しない程度。
「耐震等級2」・・・
耐震等級1で想定される1.25倍の地震が起きても倒壊・崩壊しない。これは学校や病院など災害時の避難所となる建物の強さに相当する。
「耐震等級3」・・・
耐震等級1で想定される1.5倍の地震が起きても倒壊・崩壊しない。これは消防署や警察署など防災の拠点となる建物の強さに相当する。
「数百年に一度発生する地震」とはイメージしづらいかもしれませんが、これは阪神淡路大震災と同等程度の地震を想定しています。これは、1995年に発生し25万戸にも及ぶ被害を生んだ阪神淡路大震災を受けて、品確法が制定されたからです(品確法は2000年に施行)
しかし、品確法が施行された後、「数百年に一度」と想定された震度7クラスの大地震が「20年ほどの間に数回」発生しています。その状況を考えると、言葉通りほど本当にたまにしか起きない強い災害への備えというイメージはなくなるかもしれませんね。
どんないいことがあるの?耐震等級3のメリット
・地震保険が半額に!
地震災害の多さから加入される方が増えている地震保険には、耐震等級に応じて割引制度があります。耐震等級3のお家ではその保険料がなんと半額に!割引率は以下の通りです。
耐震等級1→10% 耐震等級2→30% 耐震等級3→50%
以前はここまでの割引率はありませんでしたが、2011年に発生した東日本大震災で、耐震等級3の住宅は地震による被害を軽微なものに抑えることができました。その結果を受け「2014年7月以降は、耐震等級3の住宅の場合、50%割引まで割引率が向上」と変更されたのです。
そして、この地震保険料は増額傾向にあります。災害が増えれば保険会社からしてもリスクになりますのでその危険度にあわせて変化していきます。
・住宅ローン(フラット35)の金利が優遇される
35年間金利が変わらない「フラット35」。この中に、所定の条件を満たせば金利の優遇が受けられる「フラット35S」があります。そこから更に金利A、Bプランに分かれているのですが、耐震等級3のお家にすれば一番技術基準レベルが高く優遇の大きい「フラット35S金利Aプラン」が利用可能になります。これは、10年間フラット35の借入金利から年0.25%の金利引き下げを受けられるというものです。
【試算例】
借入額3,000万円(融資率9割以下)、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なし、借入金利年1.24%の場合
(フラット35のホームページより引用)
・「地震に強い安心のお家」が手に入る
まだ記憶に新しい熊本の地震では、震度7が2度続くという今までに例のない災害でしたが、耐震等級3の住宅に関しては目立った被害はなかったそうです(耐震等級2では倒壊した住宅もあったそうです)
耐震等級3すなわち「住宅最高ランク強度を誇る家に住めるという安心が手に入る」、その安心感こそがこの耐震等級3を取得する最大のメリットではないでしょうか。
知って得する!耐震性能を高めるポイント
ここまで耐震等級の大切さや耐震等級3を取得した際のメリットなどについて述べてきました。では、実際どういうポイントを抑えることによって耐震性能の高い家、耐震等級の高い家になるのでしょうか?いくつかポイントを紹介します!
①建物は軽い方が耐震性が高くなりやすい
「建物は重たいほうが地震に強いのでは?」と思われがちですが、実はそうではありません。建物や屋根が軽いほど、地震の揺れに対して振幅が小さくなり、耐震性が高くなります。そのため、軽量な木造住宅は、耐震性能を強化しやすいと言われています。
②強い耐力壁を使う
耐力壁とは、地震や風など横からの力に抵抗することができる壁のことを言います。この耐力壁が多ければ多いほど、耐震性が高くなります。単純に、「壁が多い家は強い」ということです。ただ壁だらけのお家では生活しづらいですよね。
そこで注目いただきたいのが耐力壁の強さを表す「壁倍率」という指標です。1~5倍の数字で表され、数字が大きいほど強くなります。「壁倍率5倍の壁1つ」は、「壁倍率1倍の壁5つ分」と換算できるので、強い耐力壁を使えば壁だらけにすることなく強度の高いお家にすることができます。
③耐力壁や耐震金物をバランスよく配置
耐力壁や耐震金物を多く使っていても、耐力壁が一部に集中しているなど、配置のバランスが悪ければその効力を十分に発揮することができません。南側は窓を多く設け、LDKは広い空間に…など間取りの要望を叶えていくとアンバランスになりがちです。間取りの要望と耐力壁のバランスを十分に検討してくれる会社選びが必要になってきます。
④大きな吹抜けや多層階は避ける
床も住宅全体の耐震性能を高めるポイントの一つです。強い床は面構造となり建物を支える大切な要素になります。また、壁と床はつながっているため、耐力壁がしっかり踏ん張って耐えられるように強さのある床が必要になります。
そのことから、2階の床が少なくなってしまう大きな吹抜けがある家、床面に段差がたくさんできてしまう多層階設計のお家は耐震等級3になりにくいお家といえます。
富山、石川において耐震等級3は本当に必要?
「耐震等級3って本当に必要?特に北陸は強い地震は少ないし…。」「富山や石川では長期優良住宅に求められる耐震等級2までで十分じゃない?」などという意見があります。たしかに全国的にみても、富山や石川は地震のリスクが少ない県といわれております。
下の図は政府の地震調査研究推進本部による2016年の地震予想図です。
この図からも確率が低いとされていることがわかりますね。
ただ、ここで注目いただきたいのは、図1が「2016年の地震予想図」であるということです。2016年とは、熊本地震が起きた年です。震度7の地震が2回、6以上で7回と非常に大きな地震でした。でも上の図を見てみると、意外にも熊本県は北陸と変わらず大きな地震が起きる確率は非常に低いとされていたのです。
つまり、どこでどんな大きさの地震が起きるかは本当にわからないということです。
耐震等級1のお家に比べ、耐震等級3のお家は当然費用も多くかかります。最終的には「人それぞれの考え方」ということになるかと思います。自分たちのしたい間取りを優先してお家づくりをされる方もいますし、構造躯体をコストカットして安くお家を建てたい、なんていう方もいらっしゃるでしょう。
ただ、「よくわからないから」などという理由で、少しでも金額を抑えるために耐震対策をしないという考え方はおススメできません。いろんな考え方はあると思いますが、様々な意見を聞き、自分たちにとって本当に必要ないのか、そのメリットや注意点、リスクを吟味したうえで、どうされるかを判断していただきたいと思います。
まとめ
今回は耐震等級についてお伝えしました。長持ちする家にしたい、強い家にしたい、という方は是非ひとつの指標にしていただければと思います。最近では耐震等級3「相当」という怪しげな謳い文句もありますが、耐震等級3と耐震等級3相当は全くの別物ですので、しっかり確認して惑わされないようにしてくださいね。
タカノホームでは、少しでも多くの方に地震に対する安心感をお届けするために、壁倍率5倍の耐力壁を自社で開発し、大きな空間と耐震等級3の両立を実現しました。
昨今では、繰り返しの余震により耐震性の高い建物もダメージを受けたという熊本地震の教訓から、ただ耐震等級3であればいい、という状況でもなくなってきています。耐震性能を長持ちさせる構造や、制振装置との併用などにより「いつまでも地震に強い家」が今後必要になってくると思います。もっと詳しく知りたいという方は、こちらをご覧ください。