COLUMN住まいのコラム

家づくりで後悔しないための住宅購入タイミング

イエタッタ編集部
2022.11.07

後悔しない家づくりを行うために。住宅購入のベストなタイミングとは?

 

住宅購入

 

「自分の家が欲しい」と思い、いざ家づくりを始めようとしても、何からすれば良いのか迷ってしまう人は少なくありません。「まずは住宅展示場へ見学に行ってみよう」「とりあえず資料請求をしよう」と、何となく行動する人が多いのも事実。しかし、この“何となく家づくりをする”ことによって、後悔するかもしれないのです。

 

今回は、住宅購入のベストなタイミングや、後悔する人の特徴、失敗しないためのポイントなどを、住宅相談カウンター『イエタッタカウンター』を運営している一級建築士の鶴見さんと大海さんに話を伺いました。

住宅購入のベストなタイミングは「建てたいと思った時」。その理由とは?

住宅購入タイミング

 

「住宅購入のタイミング」というと結婚や子どもの進学など、ライフスタイルの変化に合わせて行う人が多い印象を受けます。しかし、本当にこのタイミングがベストなのでしょうか。この疑問に対して鶴見さんは、「建てたいと思った時がベスト」と話します。

 

鶴見さん「僕はよく相談者さんに、『家づくりは、ライフステージを上げるためのイベントではありません』と伝えます。

 

例えば、『子どもが生まれたら家づくりをする』みたいに、ライフステージが変わるタイミングで家づくりをする人って多いんですね。そして、だいたい皆さん30代くらいで家を建てて、そこから50年くらい暮らす

 

でも50年のうち、子どもがその家で暮らす期間って20年くらいじゃないですか。だから、『子どもが生まれたから』『結婚したから』といって、ライフステージを上げるイベントのように家づくりを行うのは、少し違うのではないかと思います。

 

もっと長期的な視点で、暮らしを充実させるために行っているかという視点が大切。これが1つ目の理由です」。

 

鶴見さん「2つ目の理由は、物価の上昇です。これまで日本は、目立った物価の上昇がありませんでした。理由としては、人件費が安い中国や東南アジア諸国に製造拠点(工場)を移していたことなどが挙げられます。

 

しかし現在は、日本でも物価が上昇しています。さらに、高齢化によって労働人口は減少し、経済成長も難しい状況です。反対に中国や東南アジア諸国は、経済成長によって人件費や材料費が上がってきています。すると、製造しているモノの値段も自然と上昇しますよね。日本は、これが物価上昇の理由です。

 

そういった理由から、今後も物価は上がり続けると予想されています。だから、家の値段も高くなっていく。そのため、単純に高いか安いかだけの話でいうと『早く建てた方がいい』となるんです」。

 

鶴見さん「最後にもう1つ。日本独自の理由として大工さんの減少があります。実は日本の住宅着工戸数って、2020〜2030年の間に3分の2になると言われているんです。それと同時に、ハイペースで大工さんの数も少なくなっています。

 

建てる戸数は減っても大工さんが足りないから、今までの1.4倍の労働力が必要になるとも言われていて、必然的に大工さんの取り合いになり、人件費も上がってくるんです。

 

そのため、2つ目の理由である物価上昇と、職人さんの減少ペースを踏まえて考えると、将来的に家の値段が上がるという予想になります」。

住宅購入は大きな買い物になるため、できるだけ費用は抑えたいと多くの人が思っているはず。資金的に準備ができている状態で住宅購入を迷っているのであれば、早めに行動したほうがよさそうですね。

そもそも住宅購入って、どのような流れになるの?

住宅購入の流れ

住宅購入におすすめなタイミングや、その理由も分かりました。しかし、ここで新たな疑問が生まれます。住宅購入とは、どのような手順で行うのが良いのでしょうか。住宅購入の手順を鶴見さんに尋ねると。

 

鶴見さん「住宅購入の流れとしては、このような感じになります。


家づくりのスケジュール

 

なかには、土地から探す人もいます。でも住宅ローンって、原則土地と建物セットでの借り入れしかできないんですよ。

 

それに、先に土地を購入しようとしても、どんな家を建てるか方針が見えていないと、家と土地の総額も把握できません。そのため住宅会社を先に絞って、総額を把握しながらやっていくという順番が良いと思います。

 

とはいえ家づくりの手順って、同時並行するものがとても多くて説明しづらい部分でもあるんですよね。



土地契約の流れ

 

最初に住宅会社を選び、概算の資金計画を立てます。その後、土地が決まると間取りなどを検討しながら、

住宅ローンの審査も行うんです。

 

土地の契約後は、引き渡しまでの間に住宅ローンの審査をおろし、さらに土地と建物セットの金額で住宅ローンの審査もおろすため、先に住宅費用だけ払い、つなぎ融資(※)や分割実行(※)などを行いながら家づくりの方も進めていきます。

 

総額を把握するために、土地よりも先に住宅会社をある程度決めるという感じです」。

つなぎ融資:住宅ローンとは異なる形でお金を借りることができ、住宅完成までの期間をつなぐローン。担保は必要ないが、住宅ローンより金利が高い。その他にも条件があり、費用負担は多くなる。しかし、円滑に住宅ローンを利用できる。


分割実行:住宅ローンの借入金額すべてを実行するのではなく、少しずつ必要な分だけ借りていく形。

 

ここまでの話から、家づくりの流れも理解できました。しかし家づくりを始めると、多くの人が最初に住宅展示場へ足を運んでいる気がします。それは良くないことなのでしょうか。

鶴見さん「住宅展示場を見学する目的の1つは、『自分たちに合った、家づくりができる会社なのかを判断すること』です。どんな家にしたいか、どのくらいの予算感で考えているかなどによって、当然見に行くべき住宅会社は変わってきます。

 

そのため、価値観のすり合わせや、家づくりの勉強をせずに住宅展示場へ行くのは良くないかなと思います」。

住宅購入で後悔する人には特徴がある

住宅購入で後悔する人

 

念願のマイホームを建てたが、住んでみると「何か違う……」と後悔する人も少なくありません。鶴見さん曰く、注文住宅を建てて後悔する人には共通した特徴があるそうです。

 

鶴見さん「後悔する人の1つ目の特徴は、『家づくりの勉強や価値観の整理をせずに、とりあえずで動く人』。

 

例えば、石川県に住宅会社って何百社とあるんです。これって逆の見方をすると、それぞれに異なる特徴があるから、何百社もの住宅会社が倒産せずに共存できていることになります。だから家づくりを考えている人は、その違いをちゃんと理解するための基礎知識が必要になるんです。

 

ただ皆さんそれを知らないから、『とりあえず住宅展示場に行く』『とりあえず資料請求をする』、そして何となく良さそうな会社と契約をする。でも、暮らしてみると違和感が出てきて 『やっぱり違った』と気づくパターンが非常に多い」。

 

大海さん「いくら住宅展示場に足を運んでも、良し悪しの基準を分かっていないから、結局どれが良いのか分からなくなる人は本当に多いと思います。最終的に、『営業さんと相性がいいから、ここに決めよう』とする人も結構いますね」。

 

鶴見さん「でも家を建てるのは、営業さんではなく各種専門の職人さんなので話は別なんです。それに仕事だから丁寧に接して当然っちゃ当然。そこは気をつけた方が良いと思います」。

「営業さんとの相性だけで決めてはいけない」。このことも頭に入れて、住宅展示場へ行きましょう。

鶴見さん「あと後悔する人の特徴として、『短期的な目線で考える』も当てはまるかな。例えば、住宅会社さんに出してもらった見積書が、予定より100万円高くなっていたとします。

 

家はその分良くなりますが、なかには『100万円削減しないと!』と思う人もいるでしょう。しかし削るためには、住宅の内外装や設備機器の仕様などを諦める必要があります。そのため、100万円削減できたとしても、理想通りの家にはならないんです。

 

そこで、100万円という漠然とした金額ではなく、35年の住宅ローンで支払うと考えてみてください。月々の支払いは、金利も含めて3,000円弱。コンビニで無駄遣いするのをやめたり、携帯をSIMフリーの安いタイプに変えたりするなど、少し暮らし方を工夫すると無理なく支払えそうだと思いませんか。

 

そういう風に、長期的な視点で考えることが家づくりを成功させるポイントだと思います」。

住宅購入を初期費用だけで選んではいけない理由とは?

初期費用

 

「家づくりは、長期的な目線で考えることが大切」と話す鶴見さん。この話は、住宅購入を初期費用だけで選んでしまう人にも言えるそうです。しかし、なぜ初期費用だけで選んではいけないのでしょうか。

鶴見さん「『家にかかる費用は、長期的に支払うものだから』です。先ほどお話ししたように、支払い金額が100万上がったとしても、住宅ローンは月額3,000円ほど増えるだけ。それほど生活に影響する金額ではないんです。

 

それと僕は、『かかる費用=品質』だと思っています。例えば、費用をかけて断熱性能を上げることで、光熱費の削減につながります。初期費用が高くても維持費や電気代などが安くなることから、住宅購入を初期費用だけで判断するのは難しいんです。

 

外壁も、10年に1回塗装をしなければいけない材料もあれば、20年に1回塗装をすれば大丈夫な材料もあります。そうなると、耐久性を維持していくためには、かかるリフォーム費用は倍になるわけで。

 

いくら初期費用が安くても、結局暮らしていくうちに倍のリフォーム費用を支払うことになるのであれば、そこまで金額に差はない。だから長期的な視点で考えると、購入費用を落とすことはおすすめできないんです」。

注文住宅で失敗しないためにやるべきこと

後悔する人も多い家づくりにおいて、失敗しないためには何をやるべきでしょうか。鶴見さんへ質問すると、とてもシンプルな答えが返ってきました。

鶴見さん「『家づくりを勉強して、自分たちの価値観を整理できること』ですね。家づくりというと、『家を建てなきゃいけない』と感じる人が多いと思います。でも実際は、建てなくてもいいんです。

 

東京や大阪・福岡など、都会に暮らす友人の家を思い出してみてください。多くの人が、賃貸住宅に暮らしていませんか。『家は絶対に建てるもの』と思いこんでしまいがちですが、『家を建てない』という選択肢があることも覚えておきましょう。

 

そのことを知ったうえで建てるのであれば、長期的に「自分達のライフスタイルにとって、必要な投資なのか」と考えることが、失敗しないためのポイントになります。

 

住宅購入は、大きな買い物です。しかし、住宅中心の生活にしてしまうと、『子どもが大学に行きたいと言い出した時に、お金がないから行かせられない』『住宅ローンの返済があるから、趣味や旅行に使うお金がない』などの問題も出てきます。

 

だからこそ、価値観の整理と、『家は暮らしの一部として考える』ことを忘れないようにしてください」

住宅展示場へ見学に行ったり資料請求をしたりと、正解が分からないまま何気なく行動してしまいがちな家づくり。その何気ない行動によって、後悔してしまう可能性も。

 

そうならないためにも、まずは家づくりの勉強や価値観の整理から始めましょう。「自分たちだけでは不安」という人は、一級建築士である鶴見さんが監修・運営を行う、住宅相談カウンター『イエタッタカウンター』を活用してみてください。

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